2015年7月5日日曜日

デフォルト・モード・ネットワーク (Default Mode Network)

この記事は、クリエイティブ・コモンズ・表示・継承ライセンス3.0のもとで公表されたWIKIPEDIAの項目"Default Mode Network" 15:43, 15 May 2015‎版 の一部を邦訳し二次利用しています。この記事の著作権も同ライセンスを継承しますが、明示的、暗示的問わず内容に関するいかなる保証もありません


神経科学において、デフォルト・モード・ネットワーク(以下DMN)とは個人が外界に注意を払っていなく、かつその脳がウェイクフルな休憩にある時に活性化される脳の領域。デフォルト・ネットワーク、デフォルト・ステート・ネットワーク、タスク・ネガティブ・ネットワークとも呼ばれるDMNは、0.1Hz以下のコヒーレントな神経振動によって特徴付けられる。目標志向的な活動中、DMNは非活性化され、タスク・ポジティブ・ネットワーク(以下TPN)と呼ばれる別のネットワークが活性化される。DMNはタスクから独立した内観あるいは自己言及的な思考に相当し、一方でTPNは行動に相当する可能性がある。ゆえにDMNとTPNは「反相関関係にあるコンポーネントをもった一つのデフォルト・ネットワークの要素群と考えられる」可能性がある。

解剖学

DMNは相互に結ばれ、かつ解剖学的に次のように定義される脳のシステム: 個人が白昼夢そして未来の予測、記憶の想起、他者の視点の推測のような、内省的なタスク取り組む時に優先して活性化される―。DFNは外界の視覚的な信号に注意を向ける脳のシステムと負の相関関係にある。DFNは記憶のために内側側頭葉の一部を、心の理論のために内側前頭前皮質の一部を、統御のために後帯状皮質を、隣接する腹側楔前部と内側、外側、下頭頂葉皮質と共に利用する。構造的そして機能的な接続性でDFNは極めて高い一致を示しているとみられており、これは脳の構造的な基本的設計は、この特定のネットワークが他の精神的な活動が処理されてない限り通常状態で活性化されるという様な方針の上に成り立っていることを示唆している。幼児の脳においてはこのデフォルトネットワークの証拠は限定的だが、デフォルトネットワークの接続性は9歳~12歳では強固となり、デフォルトネットワークは発達にともなう変化を行うことが示されている。

機能

DMNの機能ははっきりしていない。しかしこのネットワークの活動は、注意や遂行機能に使用される領域の活動と負の相関関係がある。ヒトにおいてはこのDMNは心が散漫としている(mind-wandering)時の自発的な思考を創出すると仮説付けられ、また想像力に関連する可能性がある。一方で、デフォルトモードの活動は特定のどの思考にも結びつかない、脳内をゆく潜在的な生理学上の過程を示しているかもしれない。

病態生理学

DMNはアルツハイマー病、自閉症、統合失調症、うつ、慢性疼痛などの病気と関連すると仮説付けられている。特に、認識的に困難な課題におけるDMNの非活性化の失敗は自閉症に、活動過剰時の失敗は統合失調症に関連付けられている。アルツハイマー病ではこのデフォルト・ネットワークはアミロイドβの生成によって優先的に破壊される。児童虐待等の長期のトラウマを経験した人においては、このデフォルト・ネットワークの低い接続性が発見されている。PTSDを経験した人の間では後部帯状回において、活性度の低調がみられた。このデフォルト・ネットワークの過剰な結合はうつ病の反芻思考と慢性疼痛に結び付けられている。

批判

「デフォルト・ネットワーク」の考えは例外なく受け入れられているわけではない。特定の「困難な」課題を行っている脳よりも休んでいる脳がより処理していることに対するより単純な仮説があるということ、また休んでいる脳の活動と本質的な違いがないという理由から脳の機能を理解するにあたり、このデフォルト・モードのコンセプトは有用ではないという批判が2007年になされた。

更新履歴

更改内容 更改日付(JST) 更改内容
1 新規作成 2015年7月5日 新規作成
2 更新 2015年7月6日 demanding taskの訳を修正

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